1. トップ
  2. クリエイター
  3. 「タテ読みマンガアワード 2024」大賞受賞の脚本家・つるこ。先生による漫画シナリオワークショップを開催!

クリエイター

2025.03.21

「タテ読みマンガアワード 2024」大賞受賞の脚本家・つるこ。先生による漫画シナリオワークショップを開催!

eye catch

はじめに

こんにちは!デジタル漫画出版社のソラジマ広報チームです。

現在、ソラジマでは「ソラジマ タテ漫画スクール」を開講し、未来のクリエイターの創造力を引き出すサポートを行っています。この度、これまでのネーム講座、背景講座に続き、いよいよワークショップ形式での漫画シナリオワークショップがスタート!

講師として登壇するのはなんと、「タテ読みマンガアワード 2024」大賞受賞作品『無能な継母ですが、家族の溺愛が止まりません!』の原案・脚本を務めるつるこ。先生です。

講座に向けて、つるこ。先生のお仕事の様子から参加をご検討されている方に対するメッセージまで、インタビューしました。

この記事はこんな人におすすめ

・タテ読み漫画の原案者・脚本家を目指したい
・ソラジマの漫画シナリオワークショップに興味がある
・現役の脚本家からシナリオ制作の指導を受けたい



未経験から挑戦する際に勉強したこと

――初めに、つるこ。先生のご経歴を簡単にお教えください。

学生時代に役者をしていましたが、上京後に挫折。故郷の三重に帰り、結婚と出産を経験しました。

当時、私は車の免許を持っておらず、「免許を取るためのお金をなんとかしなきゃ」と思い、経歴・場所関係なく仕事のチャンスがあるシナリオライターを始めました。

――未経験から漫画の原案や脚本に挑戦し、成果を出されています。どのように脚本制作を学びましたか?

基本的に独学で、誰かに学んだことはありません。
一つ知識を得たらすぐに仕事で実践し、困ったらまたすぐに勉強する、というトライ&エラーを積み重ねてきました。

――独学ということなのですが、勉強には何を使用していますか?

特別なものは何も使っていなくて、本やネット上の解説が中心です。
本なら、ベストセラーで一番有名なものを選び、「これをやってみよう」と掘り下げていくスタイルです。

本当にたくさん知識を取り入れたり、勉強したりしたわけではないので……。恥ずかしいですね。

——逆に、もっと早くからやっておけばよかったと思う勉強や、身に付けておけばよかったと思うスキルはありますか?

特にないです。

というのは、勉強なんてどれだけしても足りないから。「早くからやっておけばよかった」と言ってもキリがなく、こだわりすぎると逆に実践や挑戦がおろそかになってしまうので、そこに対しては後悔していません。

本当に必要だと思ったら、今から覚えるという感じです。

強いて言えば、勉強ではなく、「もっと早く真剣に脚本を書き始めたらよかった」「応募したらよかった」「挑戦したらよかった」という、「挑戦しなかったことに対する後悔」はあります。

時間や経験は、誰もが平等に与えられた最強の武器。
だから私は今やりたいと思ったら、まず行動する。今が残りの人生で一番若い!ということを意識して生きています。

——これまでの経験やスキルの中で、漫画の原案・脚本作りに活きているものはありますか?

全部です!

演劇も、学生時代にやっていたスーパーのバイトも、広告マーケティングの勉強も、日々の買い物も、子供と泣いて怒って笑って過ごす毎日も、もう全部が活かせる経験です。

執筆に活かせない経験はないと思っています。むしろ、「なんでも活かしてやる!」という精神が一番役に立ってるかもしれません。

漫画シナリオワークショップで参加をご検討されている方に伝えたいこと

——今回の漫画シナリオワークショップでは、参加をご検討されている方の皆さんにどんなスキルと知識を持ち帰ってほしいですか?

一番は、「職業・物書き」として細く長く、着実に生きるための技術です。
たとえタテ読み漫画が滅んでも仕事には困らない!みたいな。

——タテ読み漫画が滅んでも、ですか。笑

極端な言い方をしましたが、この先タテ読み漫画だけでなく何がどうなるかわかりません。

未来の予測なんてできないので、「タテ読み漫画の技術を伝える」というよりは、私が「職業・物書き」をする上で培った、「将来の不安を少しでも減らすための知恵と技術とコツ」をお伝えしたいです。

「おばあちゃんの知恵袋」のようなものですね。

——「おばあちゃんの知恵袋」ですか!!因みにこれまで脚本を書く上で苦労したことはありますか?

脚本を書く上での苦労ですか。
あまりないですね……。

——たとえば、「物語の展開が思いつかない」とか。

その点はあまりないです。

私が脚本の仕事をする上で困ること・怖いことは、「連絡が来ない」「作業や修正の内容が不明瞭」「意思疎通が取れない」「報酬が振り込まれない」「スケジュールがまったく見えない」こと。

つまり、将来の不安とコミュニケーションの不安ですね。

これらを解決する方法は、「徹底的な言語化」と「すり合わせ」だと考えています。

——創作の面で困ったことはありませんか?

自分では困った自覚がないのかもしれません。

—— それはもう、天才なのでは?

絶対に違います。むしろ逆で、私は自分に才能がないと諦めがついています。

さらに、将来の不安にいつも怯えているので、困った時の対応パターンや小手先のテクニックなど、「これは役に立った」ということを全部言語化してメモに残しているんです。

だからこそ講座では、才能ややる気に頼らない普遍的なテクニックをお伝えできたらいいなと思っています。

——創作面では困ったことがないとのことですが、読者を惹きつけるために心がけているポイントは何ですか?

「誰のための物語かを忘れない」ことです。
詳しくは講座内で語ります(笑)。

——では、脚本を執筆する上で日本と海外の読者層の違いを意識することはありますか?

あります。
常にめちゃくちゃ意識しています。詳細を語れば、講義1回分でも終わらないくらい大事で濃い話です。

——詳細を少しだけ教えてください!

うーん!(笑)

簡単に話しますと、まずは日本の読者に届く作品を作ること。

その上で、海外配信を見据え、「グローバルに受け入れられる表現か」「広告規制や文化に引っかかる表現はないか」などを編集者と一緒に企画段階からチェックしています。

——過去のインタビューにて、「絶対使わない範囲の内容も設定しておく」とのことでしたが、脚本を書く際に必ず行うプロセスを教えてください。

「最初にできる限り細かく決めておくこと」と、「臨機応変に対応するための『ゆとり』を残しておく」ことです。

キャラクター・プロット・世界観は初期段階から可能な限り細かく作り込みますが、エピソードはキャラクターやプロットに応じて柔軟に展開できるよう「ゆとり」を持たせておきます。

たとえば連載の場合、企画の段階では何話で終了するかわかりません。そのため、あらかじめ「30話エンドの場合」「50話エンドの場合」とストーリーのパターンを用意し、状況に応じて各パターンから設定と情報を引き出せるようにしています。

——とても用意周到ですが、「失敗から学んだこと」や「意外だった成功体験」はありますか?

常に失敗し、常にそこから学んでいます!意外だった成功体験というのは、あまりないかもしれません。

——ほとんど想定内の成功ということですか?

もう一度言いますが、私には才能がないし、天才ではありません。
それはこれまでの失敗を経て、よくわかりました。

何度も失敗を反省し、分析し、再挑戦を繰り返した先に得た成功なので、「なぜ成功したのかわからない」という体験があまりないんです。

今は最初から、「最大限の成功に近づくための努力」と「失敗が最小限で済む準備」をして挑んでいます。成功すれば、「よしよし、うまくいった」。
失敗しても、「よし、じゃあ次はこの方法でカバーしよう」と思うようにしています。

——なるほど。それでは講師として「初心者が陥りがちな脚本作りのミス」とその対策について教えてください。

よくあるのが「修正依頼が怖い!」と思ってしまうこと。でもそれは、絶対に勘違いです。

修正依頼を受けると、人格を否定されたような気持ちになったり、「自分には才能がない」「自分はダメな奴だ」と落ち込んだりする方が多いですよね。

でも、編集者からの修正依頼は「現場の作業者に情報が適切に伝わっていないから、きちんと伝えましょう」という意味でしかなく、人格や才能を否定しているわけではありません。

作業者に伝わらなければ、読者にはもっと伝わらない。

修正依頼が来たら「これはこういう意味です」と説明したり、わかりやすく修正したりして、脚本の意図を伝える努力をするのみ。
人格や才能は関係ないので、その点だけ覚えておいてほしいです。

——もう一つ、参加をご検討されている方に特に伝えたい「シナリオ作りの核」を教えてください。

シナリオとは「作業者に情報を伝える設計図」であり、「始まりの存在」です。

意味不明な設計図や、完成する日がわからない設計図は関係者全員を不幸にします。

そのため、この2点を「シナリオ作りの核」としてしっかり覚えた上で、作業者ときちんとコミュニケーションを取ってほしいと伝えたいです。

タテ読み漫画市場の今後

——これからのタテ読み漫画市場をどのように見ていますか?

まったくわかりません!

関連ニュースは一通りチェックしています。だけど、いい話もあれば悪い話も出てくるし、正反対のことを言っている情報もあります。

それぞれ情報を発信する人が自分に有利なポジションで話しているので、何が真実かなんてわからないですし、当然未来なんて誰にもわかりません。

だけど、私自身はそんなに悲観していません。

タテ読みに限らず、どの業界だって未来予想なんて予想でしかなく、あてにならない部分もたくさんあります。

ヨコ読み漫画だってアニメだって今どんなに売れている市場だって、未来は全然わかりません。近年はAIも登場し、業界や法律がどう変わるか、皆気になって仕方ないと思います。

そんな中で、タテ読み漫画市場には「チャンスの数」と「選択肢の多さ」という圧倒的な強みがあると思います。

——「チャンスの数」と「選択肢の多さ」について、詳しく教えてください。

タテ読み漫画にはネーム・線画・着色・キャラクターデザイン・衣装デザインなど、多くのポジションがあります。

「ネームだけ」「デザインだけ」とピンポイントで活躍できるため、これまで時間や場所、家庭などの事情で才能や技術を活かせなかった人にもスポットが当たるようになりました。多くの人が経験を積みながら、磨いた力を発揮できるんです。

さらに、タテ読み漫画は他よりも圧倒的に打席数が多く、多少失敗しても修正して次に挑戦できる機会が豊富にあります。複数の連載を同時に持つ人も多いです。

これからの時代に合わせて、タテ読み漫画もヨコ読み漫画もアニメも、大なり小なり形は変わっていくでしょう。

それでも、磨かれた経験や技術は絶対に死にません。タテ読み漫画市場で技術を磨いたクリエイターは、とても強いと思います。

あくまで個人の感想ですが(笑)。

タテ読み漫画の原案者・脚本家になってよかったこと

——タテ読み漫画の原案者・脚本家の道を選んでよかったことはありますか?

2つあります。1つは、先ほどの通り「たくさん挑戦できること」。

ストーリーから作画まで、すべて自分で担当する漫画家が週刊連載を何個も掛け持ちするなんて無理ですよね。

でも漫画原案者は、それが可能です。原案者だけでなく他のポジションの人たちだって可能です。

私には書きたい話がいっぱいある。それと同じくらい、将来に対する不安もあります。だから仕事はたくさんあるに越したことはありません。

私にとって、いろいろな挑戦をさせてもらえる環境は本当にありがたいです。

そしてもう1つは、「書いた文字が美しい漫画に仕上がって帰ってくること」ですね。

——フルタイムで企業勤めの経験もあるとお聞きしました。これまでの仕事と原案・脚本の仕事で違う点は何ですか?

場所・時間・働く量・仕事との関わりの深さなど、裁量の幅が広い点です。あと、週刊連載なので、ある程度ルーティン化できる点も違いますね。

たとえば、『ママ溺』に関しては、「どんなグッズを作るか」「どんなキャンペーンをしていくか」など原稿の内容だけでなく、いろいろなことを編集者と相談して決めていますし、私の意見も汲み取ってもらっています。

私は演劇をやっていたこともあり、なんでもやりたいタイプ。ただ書いておしまいではなく、その後もいろいろ意見を出せることが楽しいです。

一方で、そこまで携わらない原案者や編集者もいます。

これは制作会社によって異なるでしょうが、いろいろなやり方を選べるところがこの仕事の魅力です。

——他のお仕事との両立について教えてください。

今は専業で執筆をしているため、他の仕事との両立はありません。ただ、ごく普通の子育て中の主婦なので、家事や育児とのバランスが取りやすい点は本当にありがたいです。

育児のバランスについて言えば、最近、子供がミュージカルを始めました。これが親のサポートがとても必要な習い事なんです。

台本はすべて大人用なので漢字にふりがなを振り、知らない言葉があれば辞書を引いて説明します。さらに、子供が覚えきれないセリフやダンス・歌は親が覚えて家で教え、衣装も準備しなければなりません。

本番中も舞台に出る・袖に戻るタイミングを呼びかけたり、早着替えのサポートを行ったり……。

そんなサポートの時間も、しっかり確保できています。なんなら私も一緒に舞台に立つことだって可能です。

——専業になってからは、どのように生活が変わりましたか?

何もかもが変わりました。

一番大きな変化は、朝も眠れるところ。

ショートスリーパーでバリバリ働ける人もいますが、私はもう赤ちゃんと同じぐらい眠らないと使い物にならないんです(笑)。

さらに、夜の方が仕事がはかどるタイプなので、フルタイムで働きながら執筆していた時はベストな時間に仕事をこなすことが難しく、睡眠時間も削られて大変でした。

専業になったことで、自分の好きなようにスケジュールを組めるようになり、家族の生活に合わせて最適化できるようになりましたね。

——ズバリ、収入は変わりましたか?

変わりました。そうじゃないと専業になれないです(笑)。

私は本1冊も買えないくらい、生活に困っていた時期があります。本どころか、必要な子供のミルクやおむつ、学用品すら買い渋るくらい困窮していたことがあります。娯楽にお金を使うなんて絶対無理でした。

だけど、今は必要だと思ったものは迷わず買えます。子供が欲しいと言ったものも買ってあげられますし、やりたいと言ったことを応援してあげられます。

もちろん、教育的に買わないという選択もありますが、「買えない」ということがなくなり、本当にうれしいです。

——とてもうまく家庭と仕事のバランスを取っているのですね。一日の過ごし方を教えていただけますか?

朝起きたら身支度をして、庭でストレッチと軽い運動を行い、一日のスケジュールを整理。

やっぱり執筆をしていると運動習慣がなくなり、太陽光も浴びなくなるので、意識して時間を作っています。

その後に軽い朝食をとり、執筆やミーティングなどを行います。

朝がとにかく苦手なので、申し訳ないと思いながら子供の送り出しは家族にお願いしています。本当、家族に感謝です。

昼食後は、大事な昼寝の時間です。15〜30分ほどで起き、軽い運動を挟んでから仕事します。

夕方は家事をしたり家族と過ごしたり。この家事の間にアニメやドラマなど動画で見れるものを流してインプットしています。

夜に子供が就寝したら、また執筆や修正対応などの仕事を再開するイメージです。

体調が悪い時は昼寝時間を2時間取るなど、臨機応変に過ごしています。

だいたい1日あたり7〜8時間は仕事の時間で、フルで休みを取ることはありません。1日10分でもいいから執筆時間を確保するようにしています。子供のミュージカルの稽古場でカタカタと作業している時もありますね。

日々の作業記録は全部取っているので、もし参加をご検討されている方で興味がある方がいれば全部お見せしますよ。

参加をご検討されている方へのメッセージ

—―つるこ。先生が講師を務めるからこそ、提供できるものを教えてください。

私が経験してきた山のような「失敗」を、参加をご検討されている方々が「疑似的に体験・経験」できるような講座を考えました。

失敗・反省・分析をインスタント体験できるので、ここで経験を積めば本番での失敗が少なくて済む!……といいなと思っています。

——最後に、漫画シナリオワークショップへの参加を検討されている方にメッセージをお願いします。

この記事をここまで読んでくれている時点で、とても熱意がある方ということは間違いありません。

しっかり文章が読める、コミュニケーションが取れる方だと思います。

私はそんな真剣なクリエイターと切磋琢磨していきたいと思い、講師に手を挙げました。

あなたと一緒に学べることを楽しみにしています。

おわりに

今回のインタビューを通して、漫画の原案や脚本を作る上で必要な考え方と挑戦することの大切さがわかりました。

つるこ。先生の「今が人生で一番若い」という言葉のとおり、夢を目指すのに遅すぎることはありません。

今回の講座では、シナリオ作りの基礎だけでなく、脚本家として長く活躍するための知恵と工夫が学べます。

自分の物語を創り上げるために、ぜひこの機会を活かしてください。

▶︎▶︎▶︎ 脚本スクールの詳細はこちら ◀︎◀︎◀︎

この記事をシェア

facebookhatena bookmark

公式SNSをフォロー

instagram